ペット用ブラシは被毛を傷めると言われますがどの程度なのでしょうか。 スリッカーブラシは毛切れすると言われ、毛を大切にする場合はピンブラシを使います。 ピロコームのピン形状は被毛にどのような副作用があるか電子顕微鏡で見てみました。 家庭で普段使いにピロコームは安心・安全なブラシと言うことが理解して頂けると思います。 |
被毛の傷み方 | 被毛とテスト部材とに接触圧を加えるための錘の重さ | ||||||||
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3g | 5g | 20g | 30g | ||||||
テスト 部材 の 形状 |
エッジ状 | ② | 白い粉が出る | ③ | 白い粉が多く出る | ー | NG 切断される | ー | ー |
φ0.2mm | ー | 変化なし | ー | ー | ④ | コイル状になる | ー | NG 切断される | |
φ0.8mm | ー | 変化なし | ー | ー | ⑤ | ややカール | ー | かなりカール | |
φ1mm | ー | ー | ー | ー | ⑥ | 変化なし | ー | ややカール | |
比較対照 | ① | 無処理 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | |
横軸は被毛とテスト部材とに接触圧を加えるための錘の重さです。 縦軸は被毛に当てるテスト部材の形状で従来から広く使用されているものです。 丸付き数字は電子顕微鏡写真番号です。 |
各テストの写真から拡大写真にリンクします。(拡大写真はXで閉じて下さい) | |
①無処理の状態 ゴールデン・レトリーバーの被毛です。 |
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②(マットブレーカーなど) 「エッジ状」![]() 毛玉取りやバリカンの刃などに使われる エッジ状のものです。 断面の角度は90度以下はほとんど同一です。 被毛に3g(一円玉3個)の錘を付けてエッジで一回こすった画像です。 |
![]() →拡大 切断寸前の形跡あり。 |
③(マットブレーカーなど)の続き、錘を変える![]() 被毛に5g(一円玉5個)の錘を付けてエッジで一回こすった画像です。 |
![]() →拡大 エッジに白い粉が出てきました。キューティクルが剥がれ縦スジが見られる。 |
④(スリッカーブラシ) 「φ0.2mm」![]() スリッカーなどに使われる 直径0.2mm線材です。 被毛にエッジの時よりも4倍重い20gの錘を付けてφ0.2mmのステンレス線で一回こすった画像です。 |
![]() →拡大 キューティクルの浮き上がりが見られる。 エッジよりも4倍程度傷が付きにくいと思われます。 |
⑤(ピンブラシ) 「φ0.8mm」![]() ピンブラシなどに使われる 直径0.8mm線材です。 被毛に20gの錘を付けてφ0.8mmのステンレス線で一回こすった画像です。 |
![]() →拡大 被毛のキズは見られない。 長毛種はスリッカーでは毛切れするので、ピンブラシを使うのはこの電子顕微鏡写真から理解できます。 |
⑥(ピロコーム) 「φ1mm」![]() ピロコームに使われる 直径1mm線材です。 被毛に20gの錘を付けてφ1mmの線材で一回こすった画像です。 |
![]() →拡大 毛の細い部分だったが、被毛にキズは見られない。 ピンブラシよりも太いために毛の曲がりがさらにゆるやかなので傷みにくいと思われます。 |
結果、被毛に当たる部分が細い程あるいは角ばっていると被毛を傷付け、太く丸い程被毛が傷付きません。 被毛に当たる部分が細い程ピンが被毛に食い込み摩擦抵抗が大きくなっているので、それだけ被毛を抜き取る力が大きいとも言えます。 被毛の美しさを保ちたい場合は、僅かな力でキューティクルを傷めるエッジ状のものを使わずにハサミと太く丸いピンのもので手入れを行いましょう。 |
ピンの一般的な使用方法 ◎「エッジ状」 毛玉と絡み毛を切って取り除く。バリカンの片歯を使った抜け毛取り。 短毛種の抜け毛や毛玉取り、長毛種に使うとキューティクルが傷み毛切れする。 ◎「φ0.2mm」スリッカー むだ毛を取り、絡み毛をほぐす。 ピンにしなりがあり、あまり傷まないが多く使うと毛切れする。 ◎「φ0.8mm」ピンブラシ 長毛種のむだ毛を取り、絡み毛をほぐす。 皮膚に当てないように手首のスナップですくい上げるように毛をのばす。 ◎「φ1mm」ピロコーム むだ毛を取り、絡み毛をほぐす。 何年も伸びる超長毛でも傷付けにくく、生え際から毛をのばす。 尚、スリッカーやピンブラシはピン先にエポキシ樹脂やラバーの玉付けしたものも有ります。 |
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テスト方法は、被毛の毛根側を固定し、被毛の先端に錘を付け垂下しておきます。 固定部から10mmの所にテスト部材を当て固定部と水平になるようにして20mm被毛の先端に向かってテスト部材を移動させます。 キューティクルに逆らわない順方向にこする訳です。 エッジ状部材は45°上向きとして固定部方向及び錘部方向に同一角度とします。 これを一回のみ行ない電子顕微鏡で撮影しました。 尚、白い粉・コイル状やカールは錘を取り外した直後の目視した状態です。 コイル状やカールは自然に伸びていきました。 |
処理した被毛はゴールデン・レトリーバーの直毛です。(10月の被毛) 電子顕微鏡は(HITACHI Scanning Electron Microscope S-2300) |